「心を癒す」がテーマの画家ハナムラ・ヒロユキです。
今回は、青年海外協力隊に参加してボリビアの警察学校で体験したコメディーのような出来事を書きました。
日本では考えられないようなことばかりですが、見方を変えれば面白い出来事ばかりだと言えます。
どうぞご覧ください。
面白くなかったらゴメンなさい。
目次
間違ったスペイン語を使う
警察学校に着任して間もない頃。
ボリビア人の目がぱっちりしたカワイイ女性警官に
「一緒にで映画に行かない?」
と誘われました。
その頃の私はまだスペイン語が不十分でしたが(現在もそれほど話せるわけではない)、
これも勉強だと思い行くことにしました。
というか、是非行きたかった。
当日、その女性警官は風邪気味だったのでした。
映画館の中はちょっと寒かったので、
私は着ていた革のジャンパーを彼女に渡しました。
すると「要らないよ」と返されました。
日本人的感覚からするともしかして遠慮しているのかなと思い、
もう一度ジャンパーを渡しました。
すると
「いらない!」
と拒絶されました。
どうやらクドイ男だと思われたらしく、
彼女は映画が終わると速足で帰ってしまいました。
「小さな親切、大きなお世話」だったかなと反省しながら、
スペイン語がよく話せないにもかかわらず彼女に弁解の電話を入れることにしました。
警察学校内の公衆電話から、
彼女の家に電話をしました。
彼女は電話に出ました。
私は申し訳ないなと思いながら
「もしかして、怒ってるの?怒ってるの?」
と何度も聞くと、彼女は何度も
「ノー!ノー!」
と答えていました。
そうか、良かった・・・と思い電話を切りました。
でもよくよく考えたら、
自分が使った単語は間違ってないよなと思いながら
辞書を引いて確かめることにしました。
辞書を開いて指で意味の箇所まで指を辿ってゆくと
そこにはなんと・・・
「ヒゲを剃る」
と書いてありました・・・。
これを知った瞬間、
顔が熱くなり体中からどっと汗が滲み出てきました。
私は彼女に対して
「もしかしてヒゲ剃ってるの?ヒゲ剃ってるの?」
と訳のわからないことを聞いていたから彼女は
「ノー!ノー!」
と答えていたのでした。
彼女とはそれっきり。
単語を使う時は、
よく確かめてからにしようと思いました。
財布パンチ
警察学校に赴任して
はじめての授業で経験したことです。
警察学校は全寮制で、
生徒にはそれぞれ与えられたロッカーを持っています。
が、警察学校であるにもかかわらず鍵を開けて金を盗む生徒がいるので
体育の授業中も生徒たちは財布を携帯していました。
彼らの財布はなぜかパンパンに膨らんでいたので、
短パンの後ろポケットには財布が入りませんでした。
私は自己紹介してからそのパンパンに膨らんだ財布をどうするのだろうと思い
しばらく様子を見ることにしました。
柔軟体操とストレッチを始めても
彼らはまだ財布を握ったままでした。
空手の基本動作を教え始めましたが、
彼らは変わらず財布を握ったままでした。
私は3歳から空手を始めたのですが、
財布を持って突きをする姿は初めて見ました。
稽古にならないので
私のカバンの中にみんなの財布を入れるように提案しました。
すると生徒たちは言いました。
「あんたは信じられない」
お前ら何なんだ・・・、警察官だろ?って思いましたが、
この日が初めてなので信用できなくても仕方がありません。
それから何回か授業をするうちに信頼関係が築けたようで
生徒たちは私のカバンの中にパンパンに膨らんだ財布を預けるようになったのでした。
気合い!
私は警察学校で空手を指導していました。
もちろん気合いを入れることも教えていました。
日本で気合いというと「エイ!」とか「ヤー!」とイメージしますが、
ここボリビアでは違いました。
私が「気合いを出せ!」と言うと、
彼らはこう叫ぶのです。
「キアイ!」
まあ気合いは気合いなのですが、
何かちょっと違います・・・。
「パンチやキックを出すときは気合を出せ!」
と私が指導すると、
彼らはパンチやっキックをする度に
「キアイ!・・キアイ!キアイ!キアーイ!・・・」
と叫んでいました。
まあ、面白いからいいか・・・と思い、そのままにしておきました。
私は小さいときから空手をやっているので、
稽古では意識せずに気合いを出しています。
でも普通の人は気合いを入れることはあっても気合いを出すことはないので
「気合い」ってよく考えると不思議なものだなと思ったりもします。
スペイン語で説明する時も困りました。
気合いを「出せ」というのは、
「叫ぶ」でもないし
「言う」でもないし
「吠える」でもないので結局は
「キアイ!」
で片付けてしまいました。
歯を折る
警察学校に赴任してから間もない頃、
腕試しをしたいという挑戦者がたくさん現れました。
ブルース・リーのように軽快なステップを踏んで
「アチョ~~~、アチャ~~~」
と奇声を発しながらチョロチョロ動くけど、
なかなか攻撃してこない人。
いきなり殴りかかってくる人。
角材など鉄の棒などの武器を持ってくる人。
どれだけ自分が強いか延々と話して戦わずして帰っていく人。
本当に強い人。
色んな挑戦者が来ても負けませんでした。
そんなある日、私は授業中にふざけた生徒を相手にしていた時、
誤って彼の前歯を折ってしまいました。
すると、この事故が起きてからというもの挑戦者はパッタリ来なくなってしまいました。
この国での前歯の大切さを思い知らされました。
整列実験
私は警察学校の授業で、
一度に80人もの生徒を受け持っていました。
相手が日本人でも大変なのに
慣れないスペイン語で統制するのはもっと大変でした。
彼らは南米人らしくのんびりしているので、
「整列!」
と叫んでもなかなか並ぼうとしません。
私はあるとき、最初に一度だけ「整列!」と言って
それから何分ぐらいしたら整列するのか実験してみることにしました。
実験開始。
五分経過。
生徒たちは整列する気配など全くなく、
それぞれ無駄話をしています。
10分経過。
生徒たちは何かがおかしいと思ったようで、私の顔色をうかがい始めました。
しかし、それから15分が経過。
数人の生徒が私に近寄てってきて言いました。
「教官、体の具合でも悪いんですか?」
私「・・・・・・・」
彼らは永遠に整列しないと思い、
仕方がないので集合をかけました。
すると彼らは、ダラダラと歩いて集合しました。
「遅い!!やり直し!!」
と言うと、
彼らはまたダラダラと歩いて元の位置に戻っていきました。
元の位置がどこか忘れてしまい
「オレさっきどこにいたっけ?」
と聞きながらゆっくりと戻っていく生徒もちらほらいました。
のんびりした国民性なので仕方がないと思いますが
「今日はサッカーをやることにしする!」
というと、光の速さで集合します。
ゴルペ・デル・アモール
警察学校での空手の授業中、
あまりにもふざけた生徒がいるときは厳しく統制しなければなりませんでした。
今では穏やかな性格になりましたが、
当時23歳の私は若気の至りで気性が荒く怒ってばかりいました。
生徒たちはあまりにもふざけていたので私はあるとき、
自分の統制方法に名前を付けて生徒に公表しました。
その名は
「ゴルペ・デル・アモール」
訳して
「愛の鉄拳」
ふざけた連中を一列に並ばせて
「これはゴルペ・デル・アモールだ。腹に力を入れろ!」
と言って一人ずつ腹に一発ずつパンチを入れます。
最初は感情的になってやっていましたが、
いつもやっているうちにスクールウォーズの熱血教師のように感情が愛情に変わってきたような気がしました。
ゴルペ・デル・アモールは、
名前が斬新だったせいか全校で話題になりました。
しかし、打たれ弱い彼らでしたが段々となれてきたので、
ゴルペ・デル・アモールではへこたれないようになってしまいました。
そしてついにゴルペ・デル・アモールは廃止。
日本の古典的な罰である
「ただ地面に正座させるだけ」
に切り替えることにしました。
彼らには正座する習慣がないため、
足首が固いので正座をすると激痛が走るのです。
監視しながら授業をしていると、
彼らはラッパを吹いて授業の終了を知らせる係に超真面目な顔で
「早くラッパを鳴らせ!!」
と頻繁に叫ぶので、
これまたどうしたものかと思いました。
鉄格子の意味
いつものように警察学校に出勤すると出入り口には、
すごく頑丈で立派な鉄格子が設置されていました。
「最近は治安が悪いから、悪いやつが中に入ってこないようにしなきゃね。」
と私は同僚の教官にいいました。
すると彼はいいました。
「夜中にこっそり出て行って悪さをして帰ってくる生徒がいるから、外で悪さをしないために鉄格子を作って出られないようにしたらしいよ」
「・・・・・」
でもここって警察じゃないの?と思いましたが、
私は状況を楽しむことにしました。
サッカー事件
私はいつものように
警察学校で空手の授業をしていました。
生徒たちが
「俺達はすごく疲れているから、今日はサッカーをやらせてくれないか」
と懇願されました。
たまには良いだろうと思い、
私は了解しました。
しかし、すべての時間サッカーというのはさすがによろしくないので
「18時まで空手で、それからサッカーをする」
と彼らに言いました。
しばらくして一人の生徒が
腕時計を見せながら私に近づいてきました。
「もう18時になったからサッカーをしよう」
彼の腕時計を見たら18時になっていました。
おかしいと思い私は自分の腕時計を見ましたが
まだ17時45分でした。
すると他の生徒も時計を見せてきて
「ほら、もう6時だよ」
と言ってきました。
連鎖反応を起こしたらしく次々とみんなが訴え始めました。
おかしいなぁ私の時計が遅れているのかな
と不思議に思い後ろを見ました。
すると、
腕時計をわざわざ18時に合わせている生徒がいました・・・。
仕方がないので全員腕立て伏せを100回やらせてあげました。
本当にユーモラスな人たちです。
仮病で休みたいのかと思ったら
いつものように警察学校のグラウンドで空手を指導していた時のこと。
レスリング以外は、空手もテコンドーもクンフーもすべて屋外のグラウンドで行っていました。
柔道はありませんでした。
一人の生徒がくしゃみをしながら
「今日は空手の授業はやらないほうがいいよ」
と訴えてきました。
もう一人やって来て、その生徒もくしゃみをしながら同じことを言いました。
私は、ははぁ~、こいつらは仮病を使って休みたいのだなと思っていると私もくしゃみが出てきました。
グラウンドにいた生徒全員がくしゃみをし始めました。
「何だ、これは?」
と生徒に聞くと、
「研究室で催涙ガスの研究をしているから、それが風に吹かれてやってきた」
と教えてくれました。
3階にあるの研究室を見ると、窓が全開していました。
信じられん。。。
しばらくすると目から涙が出てきて喉が痛くなってきたので、授業は中止してみんなで座って耐えていました。
コメディーな出来事ですけど、日本では考えられませんね。
面白い体験をすることができました。
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