エルサルバドルの思い出・その16

古橋さん骨折する

写真は、骨折して緊急入院した古橋さんと、主治医。

なぜ、骨折したのか!!??

それは帰国の一週間前。

夕方の練習中、私は組手の指導をしていました。

エルサルバドル人のマウリシオと古橋さんは、一緒に組手をしていました。

お互い好き同士だったのかどうか知りませんが、突然、古橋さんとマウリシオが絡み合い、古橋さんはマウリシオを背負うような感じで床に倒れ込みました。

そのとき二人分の体重が古橋さんの左足にかかってしまったので、その衝撃でポキッと折れてしまったのです。

私はいつものジョークかと勘違いして、倒れて痛がっている古橋さんを見て、「またまたあ~~~、古橋さんったら・・・演技うまいなあ・・・、アカデミー助演男優賞あげちゃうよ~~~」と思っていました。

マウリシオは心配して医学の知識も何もないのに、古橋さんの痛がる部分を「ここが痛いの?ここ?」などと言って、ギュッギュッと押さえました。

マウリシオがあちこち患部を押さえるたびに、古橋さんは「痛い!痛い!痛い!」とその都度オーバーアクションで声を上げて叫ぶので、私は、確か昔こういうオモチャがあったよな~、と回想にふけてしまいました。

すると、心優しい前川さんは、涙目で「大丈夫ですか!?古橋さん!!」と心配そうにいいました。

私は人間失格なので、冷静沈着で冷血な一休さんのように「大丈夫、大丈夫。一休み一休み」などと心の中で思っていました。

しかし・・・、事件は深刻だったようです。

そうこうしているうちに、保護者の方々の協力があり、病院に連れて行くことになりました。

レントゲンを撮り写真を見ると、スパッと骨が裂けるように折れていました。

医者はいいました。

「ここで今すぐに手術するか、このまま帰国して日本で手術するか」

私は同時通訳して古橋さんに伝えようと思いましたが、気が動転していたので変なふうに訳して、古橋さんの足を後ろ向きに付けられたら大変だと思い、スペイン語が堪能な前川さんとJICA職員に任せました。

そして、古橋さんは決断しました。

「手術します・・・」

涙ぐんだ古橋さんのその目は、まるでアイフルのチワワのようでした。

前川さんは優しいので「こんなことになってしまって、本当に申し訳ありません!!」と涙ぐんでいました。

私は冷血人間なので「古橋さん、大丈夫ですよ。大丈夫、大丈夫・・・」などと淡々と励ましていました。

そして、すぐに手術開始・・・。

古橋さんの手術が終わるまで、私と前川さんは心配して手術室の前で待っていましたが、JICA職員の方が

「ごはん食べてこれば?いつ終わるかわからないから」

とのことで、私は前川さんと二人で夕食に行くことにしました。

病院の向かいにある、美味しいタコス屋さんに行きました。

凄まじい手術を受けているかわいそうな古橋さんを思うと、心苦しくてタコスがなかなか喉を通っていかないので、仕方がないのでビールを2本飲みました。

美味しいタコスに舌鼓を打っていると、古橋さんの存在が意識から消えつつあったので、私は腐った自分の心にカツを入れるために、古橋さんの分までタコスを食べてあげました。

<写真は、寝たきりの古橋さん>

手術が終了し、古橋さんが手術室からストレッチャーに寝かされて出てきました。

私は、持ち前のジョークで古橋さんを元気付けるために

「おめでとうございます。包茎手術は、無事に成功しました」

というと、あまり聞いていないような感じだったので、麻酔がまだ効いているのかと思いました。

私は、古橋さんにもう一度同じことを言うと、そんなギャグに付き合ってらんない・・・、という冷たい目で迷惑そうな顔をしたので、3回目を言うのはやめました。

病室に着くと、JICA職員から

「花村さん、今日は古橋さんの付き添いなので、ここに泊まってください」

と言われました。

いやです、とは言えないので「はい、わかりました」と快く引き受けました。

この日から私は、空手指導員兼介護士になりました。

私は寝心地の悪いソファーベッドで寝かされて、病室に男二人のむさ苦しい一晩を過ごし、翌日古橋さんを連れてホームステイ先に帰ったのでした。

<この写真、折れた足と道路の壊れ具合がリンクしてていい感じです>

ホームステイ先にもどると、古橋さんは中庭の椅子に腰掛けて、私はハンモックで揺ら揺らしていました。

私はちょっと意地悪な感じに

「古橋さ~ん、今回、魂のいい修行になりましたねえ~~(笑)」

と言うと、

「うん、本当にそう思うよ」

と真顔で悟ったようなことをいうので、私はビックリ仰天してハンモックから落ちそうになりました。

魂のレベルが0.8ポイント上がったようです。

<エルサルバドルを出発する日に撮った写真です。ホームステイ先の区域警備員のお兄ちゃん。いつもショットガンを持っています>

古橋さんは3日ぐらい寝たきり生活でしたが、それ以後は、がんばって松葉杖を使って動き回っていました。

古橋さんはシャワーに入れないので、私は庭で身体を拭いて差し上げたり、ホースを使ってシャンプーをして差し上げたりとまるで王様と奴隷といった感じでした。

ご満悦な表情の古橋さんを見ると、同じ仕事条件で赴任したのに、私だけ介護しなければならないなんて不公平だ!思い、生意気なオウムを使って彼の目を突付いてやろうと考えましたが、帰国が長引くのでやめました。

松葉杖に慣れてくると、古橋さんは「外に出たい」とのことだったので、私は付き添って歩きました。

古橋さんは松葉杖を使って機械的に動き、私は古橋さんの歩調に合わせてその横をちょこちょこ歩くその二人の姿は、まるでスターウォーズのR2D2とC3POのようでした。

涙あり笑ありの1ヶ月のエルサルバドル生活もとうとう終わり、帰国の日は、空港まで前川さんが送ってくれました。

前川さんは2年間の任期があるので、まだ一人で残って活動します。

前川さんの感謝と感動の別れの涙は、一生忘れることができないと思っていましたが、最近段々と忘れてきました。

前川さん!どうもお世話になりました!!ありがとうございました!!この恩は一生忘れません!

帰りの飛行機

帰国便は、首都サンサルバドルからテキサスのヒューストンを経由して、日本に帰国します。

ご存知の通り、古橋さんは足を骨折しているので、JICA事務所はエコノミークラスでの長時間フライトは厳しいかもということで、何と!グレードアップしたのです。

ファーストクラスに・・・・。

しかも、古橋さんだけ・・・。

介護している私は・・・・?

エコノミークラス・・・。

搭乗時刻になったので、私は古橋さんを車椅子に乗せ、ファーストクラスの座席まで連れて行きました。

古橋さんを座席に座らせると、私はキャビンアテンダントに案内され、ファーストクラス・エリアを追い出されました。

シャーッ!!とカーテンを閉められました。

飛行中に3回ぐらい、古橋さんは大丈夫かなと様子を見に行こうとしましたが、2回はキャビンアテンダントのオバサンに

「エコノミークラスの人は、こちらには入れません!」

と阻止されました。

3回目に立ち入ることができたので古橋さんを訪ねると、VIP待遇を受けて、高級なただ酒をたくさん飲んでいるようでした。

「用事が済んだら、行ってよし」みたいな態度だったので、ちょっとムっときました。

私はファーストクラス・エリアを出ると、やっぱりもう片方の足も折ってやればよかったと後悔しました。

私は、キャビンアテンダントに

「あの骨折している人のギプスの中には、実は、爆弾が入ってるんです!奴はテロリストなんです!!」

と言いたい気持ちでしたが、でも、古橋さんならこう言い返すかもしれません。

「いいえ、私は、エロリストです」と。

アメリカのヒューストン空港を経由するため、ヒューストン市内のホテルで一泊しました。

ヒューストンには、NASA(アメリカ航空宇宙局)があるので、古橋さんは誤ってスペースシャトルに乗り継いで、宇宙に行ってしまわないか心配でしたが、残念ながら大丈夫でした。

無事に成田に到着し、帰国手続きなどをするために私だけ東京をあちこち歩き回り、二日後ぐらいに帰郷となりました。

私は、古橋さんを連れて新幹線に乗るために、品川駅に行きました。

松葉杖で階段を下りるとき誰も手伝おうとしなかったので、

「日本人って、何か冷たいね・・・。さびしいよねえ・・・」

と、古橋さんは悲しそうに言いました。

そのとき、私は思い出しました。

「獅子の子落とし」のことを。

獅子は我が子を谷底に投げ落とし、這い上がってくることができた強い子だけを育てるという。

一瞬、階段の上から突き落として差し上げようかとも思いましたが、這い上がっているときに新幹線が来てしまうと困るので、今回はやめました。

名古屋に到着すると、古橋さんの家族(古橋さんの奥様とお子様たち)が迎えに来ていました。

お子様は、一ヶ月も家を空けて、松葉杖の変わり果てた姿のお父さんを見ると、一瞬「誰?」という顔をして忘れていたかのようでしたが、思い出して照れくさそうにしていました。

奥様はというと、完全に夫のことを思い出せなかったら面白かったのですが、そんなことはなく素敵な笑顔で迎えてくれていました。

幸せそうな古橋ファミリーの後姿を見送り、これで私の任務完了となったのでした。

めでたし、めでたし。

今回の記事は最後だったので、編集しずに思ったことをそのまま綴っていきましたので長くなってしまいました。

みなさま、最後までご観覧いただきましてありがとうございました。

前川さん、増田さん、そして古橋さん。エルサルバドルでの楽しい時間をありがとうございました♪

いや~~~、エルサルバドルって本当にいいとこですね!

それではみなさん、さよなら、さよなら、、、さよなら。

ABOUTこの記事をかいた人

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フリーランスの画家として活動しています。 愛知大学卒業後、青年海外協力隊で南米ボリビアの首都ラ・パスの国家警察学校で空手に当たる。現地で絵を描く楽しさを知り、帰国後独学で技法を学ぶ。その後、創作活動をして個展を開催する傍ら、ラオス、スリランカ、エルサルバドル、フィジーに空手の指導に当たる。今までの経験を創作に活かし「明るく、楽しく、やさしい絵」をモットーに元気に活動中。